はじめまして。
この度、「安定した受注を獲得するための5つの戦略」というテーマで執筆をさせていただきます株式会社リブ・コンサルティング経営企画室の野里です。
このコラムでは、景気の波に左右されずに、安定的に成長を遂げている住宅会社様の特徴を分析し、皆様の経営にお役立ていただく事を目的としてお届けいたします。
地域シェアを高めて安定経営を図るためのブランド戦略
はじめに
「安定した受注を獲得するための5つの戦略」というタイトルで執筆をさせていただきます
リブ・コンサルティング経営企画室の野里です。
このコラムでは、安定受注を実現するための戦略に焦点を当ててご紹介していきます。
第四回目は、「地域密着型企業(中小企業)の海外進出の可能性」というテーマです。
ここ数年、住宅産業のプレイヤーたちが海外での事業展開に力を入れ始めたというニュースを数多く見聞きするようになりました。
つい最近も大手ハウスメーカーである積水ハウスが、2020年度までに国内勢で最大規模の2,400億円を投じ、オーストラリアで6,200戸の住宅を供給すると発表したばかりです。
同じくハウスメーカーである大和ハウス工業も、海外投資を倍増させると発表しています。
このような動きは、ハウスメーカーに限りません。
マンションデベロッパーの多くは東南アジアを中心にコンドミニアムの開発を進めており、
また、不動産仲介会社や大手リフォーム会社も、どんどんと海外拠点を増やしていっています。
さらには、地域密着型の住宅ビルダーの中からも、海外に飛び出しチャレンジする会社が後を絶ちません。
ではなぜ今、「海外」なのでしょうか。
もちろん、国内の住宅市場が将来的に拡大が望めず成長戦略が描きにくいという問題はあるでしょう。
先述した大手企業のように、国内である一定のシェアを取り切ってしまった場合であれば、
そうした理由もうなずけるところです。
しかし地域の住宅ビルダーのように、まだまだ国内でのシェアはごく小さなもので、
国内での多拠点展開や事業領域の拡大といった成長戦略が描ける会社にとってみれば、
わざわざ経済水準も商慣習も、文化も言語も異なる海外で勝負するのは、
より難易度の高いチャレンジに思えます。
にも拘わらず、
海外に出ていこうと考える会社が増えているのは、もっと大きな理由があるからに他なりません。
可能性を秘めたタイの住宅不動産マーケットの現状
例えば、成長著しい東南アジアの中でも注目の市場タイは、
人口6,500万人強の国家で、一人当たりGDPは2014年時点で約6,000US$と、ASEAN 諸国の中で4番目に高い経済水準です。
ほどほどに経済水準が高く、ほどほどに人口規模も大きい、というのが特徴と言えるでしょう。
大手マンションデベロッパーやハウスメーカーが進出しているのも、
そうした土壌があるからこそと思われます。
また、もう一つの特徴として、日本人駐在員の多さが挙げられます。
日系企業が多数進出していることもあって、在タイ日本国大使館の発表によると、
現在約6万4千人の邦人がタイに在留しているようです。
こうした在留邦人をターゲットにビジネスを展開することも十分可能です。
タイは近隣諸国に比べ道路インフラが整備されていることもあり、メリットが大きいです。
それにより長距離輸送や人の行き来も容易になるため、工業団地を多数作りやすいという事になります。
実際、バンコクの東部に位置するエリアには自動車産業を中心に複数の工業団地がつくられており、
タイの経済をけん引しています。
またタイでビジネスを成功させる上で、ポイントとなるのが「タイ語」です。
自分自身でタイ語を習得するか、タイ語を話せる人材を早くに採用するか、そのいずれかが必要になります。
邦人相手の仲介業であっても、物件の仕入れや法的手続きなどタイ語を必要とする場面は数多くあります。
ただし、タイ語を用いることが出来れば、周辺諸国へのビジネス展開も比較的容易になります。
なぜなら、カンボジアやミャンマーの一部地域ではタイ語が通じますので、
現在はまだ時期尚早な感はありますが今後大きな成長が見込まれるこれらの国々への進出の足掛かりとして、タイに拠点を作ることも、1つの戦略と言えるでしょう。
また弊社リブ・コンサルティングでは、タイにおいても日本と同様に住宅不動産会社に対するコンサルティングサービスを展開しています。
その中でパートナーシップを組ませていただいているのが、
タイの不動産マーケティングリサーチ会社Agency for Real Estate Affairs 社(日本でいう不動産経済研究所のような会社)です。
AREA社は、タイの住宅不動産会社1,000社以上を顧客に持ち、
ありとあらゆるマーケット情報を保有しています。
AREA社が示したデータの中で、興味深かった点として以下の3点が挙げられます。
① | バンコクの新築住宅の年間供給戸数は10年前に比べて倍増している |
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② | バンコクの住宅価格はこの10年間で約40%高騰している |
③ | コンドミニアムの月間契約率は平均4.4%で、完売までに20ヶ月以上要している |
供給戸数も順調に増え、価格も上昇傾向が続いている一方で、
販売のリードタイムは伸びる傾向にあるようです。
しかしながら、タイの場合「プレビルド方式」による販売が一般的であり、
デベロッパー側は販売状況に応じて開発を進められるため、
それほど事業の回転率を重視しなくてもよい事情があります。
その点が販売期間が長期化する要因の一つになっていると考えられます。
とはいえ、契約率の低さは投資上のリスクであることは間違いなく、
需要と供給のバランスが崩れたタイミングで在庫が急増し、
不動産バブルの崩壊が起こりかねないリスクは十分に捉えておく必要があると言えます。
海外展開のパターン
概ね中小ビルダーにとっての海外展開は、以下のようにパターンに整理できます。
① | 邦人を対象とした不動産関連ビジネス |
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② | ローカル需要向けの住宅関連ビジネス |
③ | 本業のための経営資源 【(ヒト・モノ・おカネ)活用ビジネス】 |
1つ目の「邦人を対象とした不動産関連ビジネス」は大きく分けると、事業者向けと個人向けの2つです。
事業者向けには、オフィスや店舗物件、住居等を紹介する仲介業、店舗内装の施工、
サービスアパートメントの管理といったものがあります。
個人向けには、同じく不動産物件の仲介のほか、投資用コンドミニアムの販売代理、住居リフォーム等があります。
いずれのビジネスも、「日本人同士の安心感・信頼感」を強みに増え続ける在留邦人や、
海外不動産投資に積極的な日本の投資家から高い支持を受けています。
2つ目の「ローカル需要向けの住宅関連ビジネス」は、
現地需要のための不動産開発や建設業がこれに該当します。
これまでは大手ゼネコンやハウスメーカーの独壇場でしたが、
近年、中小規模の住宅ビルダーもこの分野での進出が増えつつあります。
ただし、1つ目のパターンとは異なり、事業立ち上げに相応の投資コストと期間が掛かることが大きなハードルです。
しかしながら長い目で見れば、縮小する国内で投資するよりも成長が見込める海外市場で勝負した方が、
将来のリターンは大きいと考える経営者は少なくないでしょう。
また、日本の高い技術力やサービス品質を海外に普及させたい、という熱い志を持った経営者が多いことも、この分野で進出する企業に共通する点といえます。
3つ目の「本業のための経営資源(ヒト・モノ・おカネ)活用ビジネス」とは、
海外の人財や資材、資金を本国における事業に生かすビジネスを言います。
例えば、設計業務のアウトソーシング、海外工場における建設部材・設備等のOEM生産、
海外部材の輸入、海外技能実習生の受け入れ、海外投資家やグローバル企業との共同事業、
といったビジネスがこれに該当します。
特に最も重要な経営資源ともいえる「ヒト」の面で、
国内労働人口不足の問題を抱える日本の企業にとって、
海外人財の活用は今後ますます不可欠なものとなっていくと思われます。
今や中小規模の住宅会社にとって、海外は身近な存在となりつつあります。
北は北海道、南は沖縄まで、全国から海外ビジネスに進出する企業が急増しています。
とはいえ、文化、言語、法律、商習慣といったあらゆる面で異なる海外でビジネスを展開することは、
決して容易なことではありません。
様々なリスクを想定しながら、1つ1つのハードルを乗り越え、長い時間を掛けてチャレンジしていく必要がありますが、それでも多くの経営者が海を渡っていくのはなぜなのでしょうか。
日本でのビジネスに限界を感じているからなのでしょうか。
もちろんそれも一つの要因かもしれませんが、多くの海外でチャレンジする企業には、
もっと前向きでワクワクするような思いがあると感じています。
それは、海外でチャレンジすることが、
社員たちに夢と誇りをもたらしている、ということに他なりません。
ローカルな企業がグローバルに挑戦する。
それこそが企業の活力の源なのです。
- Vol.1
- 事業戦略:新築後のアフターサポート体制を固めて営業上の強みに変える
- Vol.2
- 事業戦略:二次取得シニアマーケット開拓のための体制構築~
- Vol.3
- 地域シェアを高めて安定経営を図るためのブランド戦略
- Vol.5
- 事業成長を止めない最適な組織体制の構築
リブ・コンサルティングについて
会社名 | 株式会社リブ・コンサルティング(LiB Consulting co.,ltd.) | ||
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事業内容 | 総合経営コンサルティング業務 企業経営に関する教育・研修プログラムの企画・運営 |
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企業理念 | “100年後の世界を良くする会社”を増やす | ||
設立 | 2012年7月 | 社員数 | 85名 |
東京本社 | 東京都千代田区大手町1-5-1大手町ファーストスクエアウエストタワー20F | ||
大阪オフィス | 大阪府大阪市淀川区宮原4丁目1-45 新大阪八千代ビル 10階 | ||
韓国支店 | CCMM Bldg 12,Yeouido-dong, Young deung po-qu, SEOUL |