安定した受注を獲得するための5つの戦略

野里泰造(株式会社リブ・コンサルティング)

はじめまして。

この度、「安定した受注を獲得するための5つの戦略」というテーマで執筆をさせていただきます株式会社リブ・コンサルティング経営企画室の野里です。

このコラムでは、景気の波に左右されずに、安定的に成長を遂げている住宅会社様の特徴を分析し、皆様の経営にお役立ていただく事を目的としてお届けいたします。

安定した受注を獲得するための5つの戦略 Vol.3

地域シェアを高めて安定経営を図るためのブランド戦略

はじめに

「安定した受注を獲得するための5つの戦略」というタイトルで執筆をさせていただきます
リブ・コンサルティング経営企画室の野里です。

このコラムでは、安定受注を実現するための戦略に焦点を当ててご紹介していきます。

第三回目は、「地域シェアを高めて安定経営を図るためのブランド戦略」というテーマです。

二段階での消費増税を受け、本年度は「最後の駆け込みが見込まれるかどうか」という点が、
政局の動向と共に業界の関心事ではありますが、長い目で見れば、今後新築市場は衰退期に入り市場縮小に合わせて競争が激化していくことは間違いありません。

そのような中で、「地域シェアを高める」という事が今後の経営戦略上の重要キーワードとなる、
といった話を耳にする機会も少なくないのではないでしょうか。

「地域シェアを高める」とはどういう事でしょうか。

「特定商圏における戸建需要(戸数・件数)のうち、自社の契約・受注件数が占める割合を高める」
という事です。

例えば、2010年から2014年までの埼玉県A市の年間の平均戸建(注文・建売)着工数が2000戸だとします。
仮に、A市を対象エリアとするB工務店が、2010年の段階ではA市で10戸の契約実績を持っていたとすれば、
2010年のB工務店のA市でのエリアシェアは5%という事になります。
また、2014年でA市で20戸の契約実績であれば、ここ5年間でエリアシェアが5%から10%まで高まった
という事ができます。

エリアシェア自体は上記の考え方に基づく指標ですが、
では今なぜ「エリアシェアを高める事」が重要になるのでしょうか。

「エリアシェアが高まる=受注棟数・売上が上がるから」という事でしょうか。

実は、いま最も意識しなければならないのが、市場縮小時に起きるお客様の行動の変化なのです。
不況時には、お客様は倒産リスクを考え、倒産リスクの少ない会社や信頼できる会社を選ぶ傾向が強くなります。

そのため、不況時にはエリア内で一定レベルの認知度がある企業に集中する傾向が見られます。

過去、業界に逆風が吹いていたリーマンショック以降の市場での変化を見てみましょう。

【各都道府県のトップビルダーのエリアシェア推移】
  2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度
新設住宅着工戸数(注文+ 分譲戸建) 432,963 417,279 382,287 421,944 422,801
2007年度からの市場成長率
(注文+ 分譲戸建)※
100.0 96.4 88.3 97.5 97.7
TOP10の総戸数 68,615 66,375 66,885 78,235 81,620
2007年度からのTOP10の成長率※ 100.0 96.7 97.5 114.0 119.0
TOP10のシェア率 15.8% 15.9% 17.5% 18.5% 19.3%
※…「2007年度からの成長率」→ 2007年度を「100」とした時の比較値

各都道府県のトップビルダーのエリアシェア推移を見てみます。

実際、2008年に起きたリーマンショック前後で比較すると、各都道府県のトップ10 ビルダーのシェア率は、
15.8% から17.5%へと「1.7%」高まり、トップ企業による寡占化が進みました。

その後もトップ10ビルダーのシェア率はあがり続け、
2014年度には「19.3%」にまでシェア率は高まっています。

市場縮小が進み、寡占化が進む市場の中で、どのような戦略を描き、先手を打つのかが、今、経営者に問われています。

エリアシェアを高めるには「ブランディング」の観点が求められる

では、エリアシェアを高めていくためには、どのような観点が求められるのでしょうか。

キーワードは「限界シェア」です。

今後の市場縮小と寡占化(特定企業への集中)という2つの流れを捉えると、「限界シェア」という考え方が必要になります。

「限界シェア」とは、エリアシェア20%を超えた状態を指します。(都道府県単位で考えると7%)

限界シェアを達成する上では、エリアで住宅購入を検討する全てのお客様と接点を持つことが大切になります。

言い換えると、限界シェアを達成した状態では、住宅購入を検討するお客様が、最初に自社に来店する確率が高まり、結果として自社で決まる率が更に高まるという好循環を生み出すことができます。

経営戦略を考える上では、「一番手でエリア内のお客様と接点を持っていく」という発想を持つ事と同義です。

そのためには、

潜在客マーケティング
自己開拓比率の向上
中立ポジションのブランド作り

という事を考えていく必要があります。

潜在客マーケティングとは、「競合が少ない、まだ先のお客様名簿の入手」をゴールにする事で、
例えば、現場見学会や展示場のような直接売り気配を感じさせる接点ではなく、
お祭り系イベントの開催などまだ先のお客様との出会いを設計する事です。

自己開拓比率の向上とは、「紹介活動」や「ポスティング」など、
自社の社員の実行力と実行管理を促すマネジメント力によって、お客様との出会いを設計する事です。

中でも特に、押さえておくべき点は、「中立ポジションのブランド作り」です。
限界シェアを目指す上で最も分かりやすい指標は「認知度」です。

お客様から「住宅を考えるなら、あそこの会社を見てみようか」と、真っ先に思い浮かべていただけるようなレベルで認知度を高めていく必要があります。

極論を言えば、「あの会社のあの商品が良いから、価格が安いから」ではなく、「とりあえず住宅と言えばあの会社は見ておこう」というレベルまでブランドイメージを高めていくという事になります。

認知度を高める=新規の顧客リストを絶えず獲得しつづけていくこと

認知度を高めていくために投資していくとは
具体的には以下のような顧客接点を網羅的に張り巡らせていく事に尽きます。

単なる集客活動という位置づけではなく、ありとあらゆる場面でお客様の目に触れるような機会を設ける事で、認知度を上げていくという活動です。

「エリア内(自社で対応可能な範囲)の全てのお客様と出会う」という事を目標に施策の見直しを図る事が重要になります。い換えれば、「新規の顧客リストを絶えず獲得しておくこと」となるでしょう。

市況の悪化で軒並み集客が、という場合は、現在の施策を改めて見直しをされることをお勧めします。

「安定した受注を獲得するための5つの戦略」バックナンバーコーナー
リブ・コンサルティングについて
会社名 株式会社リブ・コンサルティング(LiB Consulting co.,ltd.)
事業内容 総合経営コンサルティング業務
企業経営に関する教育・研修プログラムの企画・運営
企業理念 “100年後の世界を良くする会社”を増やす
設立 2012年7月 社員数 85名
東京本社 東京都千代田区大手町1-5-1大手町ファーストスクエアウエストタワー20F
大阪オフィス 大阪府大阪市淀川区宮原4丁目1-45 新大阪八千代ビル 10階
韓国支店 CCMM Bldg 12,Yeouido-dong, Young deung po-qu, SEOUL

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