100棟ビルダーへの道

野里泰造(株式会社リブ・コンサルティング)

はじめまして。

この度、100棟ビルダーへの道というテーマで執筆をさせていただきます株式会社リブ・コンサルティング経営企画室の野里です。

このコラムでは、景気の波に左右されずに、安定的に成長を遂げている住宅会社様の特徴を分析し、皆様の経営にお役立ていただく事を目的としてお届けいたします。

100棟ビルダーへの道 Vol.9

特別編:リフォーム事業強化のポイント

はじめに

ご無沙汰しております。
「リフォーム事業強化のポイント」というテーマで執筆をさせていただきます
リブ・コンサルティング経営企画室の野里です。

今回は「100棟ビルダーへの道  特別編」という事で、
「リフォーム事業の収益力を高めていくか」というテーマでお伝えができればと思います。

2013年の消費増税に伴う駆け込み需要とその反動は、
新築業界だけでなく、リフォーム業界においても大きな影響をもたらしました。

一つは、競合環境の変化です。

新築事業を柱とする企業様であれば、
増税後の市場の落ち込みを受け、あるいは事前に備える形で、
「自社OBからのリフォーム受注で収益化すべく、OB客の囲い込み」を実施されてきている事かと思います。

そもそも、リフォーム市場は、新築市場より物販の要素が大きく
比較的参入が容易である市場であことから、新規参入先が増加しており、
大手家電量販店、大手小売、大手ネット通販等、
顧客接点が非常に多い企業が低単価で契約を結んでいるケースが増えています。

ローコストリフォーム企業の台頭

特に、ローコスト系のリフォーム企業において、全国への多拠点展開を進める企業が増えてきました。

愛知県名古屋市を本拠地とするニッカホームは、拠点展開を加速させており、
本拠地である愛知県を中心として、中部エリアの出店がほとんどですが、
九州地方は福岡、中国地方は広島・岡山、関西は大阪、関東は東京・神奈川と、
各地方の中心都市に出店を進めています。

ニッカホームも、コストの面で他社との差別化をはかっています。

もちろん、その地域の状況に合わせて戦い方を変えていますが、
価格で勝負できるエリアでは、こんな営業トークで展開をしています。

「リフォームの見積もりは、材料と工事費の分類が曖昧ですし、わかりにくいですよね。
それを逆手に、見積もりを高くしている企業もあるので気を付けてください。
自社では、他社の見積もりの6掛けでできると思います」

「コスト優位」を、「自社の誠実さ」に結びつけたトークにより、競合を排除し、
お客様を惹きつけることに成功しています。

通常、地場のリフォーム企業は、ショールームでの営業も現地調査も同じメンバーが行うため、
生産性には限界がありますが、ニッカホームのショールームは基本的に無人で、
コストをかけることなく、生産性の高さを保持することができます。

「自社は大手に負けない価格でやっています」
とおっしゃる経営者の方もいらっしゃるかもしれませんが、
裏を返せば、ますます適正な利益がとりにくい戦い方をしてしまっているということではないでしょうか。

他業界大手企業の参入

一方、他業界の大手企業の参入として、非常にインパクトが強かったのは、家電量販店と小売企業の参入です。

家電量販店大手のエディオンでは、業界参入わずか4年で売上高340億円を達成しています。
これまでは水周り商材がほぼ中心でしたが、それ以外のリフォームも販売を強化していくことになるでしょう。

同じく、家電量販店大手のヤマダ電機では、子会社であるヤマダ・エスバイエルホームにおいて、
リフォーム単独での売上高として130億円を見込んでいます。

ヤマダ電機の強みは、圧倒的な顧客接点の数です600店以上の直営店を持ち、
家電製品の据え付け・配送によって年間1000 万世帯以上の訪問件数を誇ります。
これによって、リフォームの潜在客にアプローチをすることが可能となりますので、
地場のリフォーム企業がお客様との接点を持つ前に、契約を決めているのです。

小売大手のイオンにおいても、全国520 にも及ぶ店舗数を強みとして、売上を伸ばしています。
各店舗内に「イオン住まいのリフォーム」というショールームを持っており、
来場された方の住まいの相談に乗る中で、リフォームの提案をしていくというスタイルをとっています。

イオンの中でも最大級の集客数を誇る店舗では、一店舗あたりの年間来場数が5000万人を超えます。

ディズニーランドの年間来場数が2500万人~3000万人であることを考えると、
驚異的な集客力であることが感じられると思います。

単純計算ではありますが、
年間来場数5000万人の中で、仮に1%の人がショールームに立ち寄っただけでも、
たった一店舗で50万人の顧客接点と持つことが可能ということになります。

中には、ヤマダ電機やイオンモールが「リフォーム事業の競合」となっているという認識を
お持ちでない方もいらっしゃることでしょう。

しかし、実際のところは、先で触れたように、競合になる前に契約を決められてしまっているという可能性があり、そのこと自体に問題意識や危機感を持てているかが重要であるともいえます。

新たな集客戦略の必要性

今後の事業展開において考えておかなければならない事は、
競合激化の中でパイを奪い合うために、お客様を集めることが困難になり、
集客コストが相対的に高くなるリスクです。

純粋にリフォーム顧客を集まる際の新規一組あたりの集客コストは約7万円が一つの目安になります。
この金額は新築の集客コストとほとんど変わらず、
同様の水準では、リフォーム事業においては赤字になってしまいます。

言うまでもありませんが、
現時点でも高い集客コストがさらに高くなるということは、今より利益が出にくくなるということであり、
新規でリフォーム受注を獲得していく上では、非常に厳しい時代がくることを意味します。

したがって、いかに効率よく、コストをかけずに、
契約できるお客様を集められるかが最重要になりますが、
最後にその集客戦略の前提として、「押さえておくべきポイント」を以下3点ご紹介します。

ポイント① 【集客コスト】一組あたり集客コストは3万円未満におさえる

仮にリフォーム新規受注において、平均単価50 万円、粗利30%、集客コストが7万円、契約率50%
だとしたら、手元に残るお金はわずか1万円で人件費も含めたら、赤字になってしまいます。

したがって、集客コストを半分以下で集められるようにならないと収益は出せないことを踏まえますと、
集客コストは3万円未満におさえるのが必須であるといえます。

(計算式例)
単価50万円× 粗利率30%=粗利15万円
粗利15万円- 契約コスト14万円(集客コスト7万円×2)
⇒人件費を除いた営業利益1万円

ポイント② 【集客の質】「価格」が第一優先のお客様を集めない

集客においては、「量」だけでなく、「質」という視点も重要です。
メニューチラシに代表されるような製品と価格を前面に押し出すやり方のみでは、
価格優先のお客様ばかりが集まってしまい、結果として、価格競争力のある競合には勝てません。

仮に契約できたとしても、価格競争が激しいわけですから、
利益が非常に出にくい状況になってしまいます。

したがって、「価格」が第一優先のお客様を集めるのではなく、
新たな集客手法によって、集客の質を変える必要があります。

ポイント③ 【集客投資】過度の投資(ショールームの自前出店等)をしない

一般的に、「集客増=ショールーム出店」と考えられていらっしゃる方は少なくないのではないでしょうか。
もちろん単に「ショールーム投資を行ってはならない」というわけではなく、
投資を行うのであれば、「何千万もの投資を行うにあたっての綿密な"事業計画"や"利益予測"を伴った"償却計画"」が必要不可欠であり、これらのシミュレーションまで徹底して行っているという事が条件となります。

ショールーム出店を行って、集客数が現状より増えるのは当たり前のことですが、
集客コストにお金をかけられないことに加え、ショールーム自体の目新しさがない昨今、
新たにショールームをつくることは得策でないことが多いといえます。

実際に、ショールームコストの償却に長年苦しんでいる企業も多いことを考えると、
安易にショールームに頼るのではなく、限られた資源の中で最大限の成果を得るための
集客戦略について考えを深めていただくことが肝要といえます。

これを機に、「リフォーム事業の収益性」「集客コスト対パフォーマンスを考えた集客戦略」について
是非、見直されてみてはいかがでしょうか。

リブ・コンサルティングについて
会社名 株式会社リブ・コンサルティング(LiB Consulting co.,ltd.)
事業内容 総合経営コンサルティング業務
企業経営に関する教育・研修プログラムの企画・運営
企業理念 “100年後の世界を良くする会社”を増やす
設立 2012年7月 社員数 85名
東京本社 東京都千代田区大手町1-5-1大手町ファーストスクエアウエストタワー20F
大阪オフィス 大阪府大阪市淀川区宮原4丁目1-45 新大阪八千代ビル 10階
韓国支店 CCMM Bldg 12,Yeouido-dong, Young deung po-qu, SEOUL

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