100棟ビルダーへの道

野里泰造(株式会社リブ・コンサルティング)

はじめまして。

この度、100棟ビルダーへの道というテーマで執筆をさせていただきます株式会社リブ・コンサルティング経営企画室の野里です。

このコラムでは、景気の波に左右されずに、安定的に成長を遂げている住宅会社様の特徴を分析し、皆様の経営にお役立ていただく事を目的としてお届けいたします。

100棟ビルダーへの道 Vol.8

新しい安定集客基盤の確立に向けた"紹介"発掘のポイント

はじめに

「新しい安定集客基盤の確立に向けた"紹介"発掘のポイント」というテーマで執筆をさせていただきます
リブ・コンサルティング経営企画室の野里です。

今回は「住宅不況下に強い集客構造」をキーワードに「正しい紹介活動のあり方」について
触れてみたいと思います。

不況下においては特に、「どのように次の見込み客を確保していくのか」といった点は、
まさに業界全体の課題といっても過言ではないでしょう。

そのような中、「集客を改善しよう」と様々な手を打たれていらっしゃる事かと思います。

イベント開催、ポータルサイト構築、新モデルハウス建築、…等々の取り組みの中で、
改めて注目されているのが、「紹介営業」です。

「紹介営業」と言いますと、昔から聞きなれた言葉であり、また過去何度も試みたという経験をお持ちの方も
数多くいらっしゃるのではないかと思います。

ただ、実際に「安定的にお客様からのご紹介で継続的に見込客の発掘、並びに契約を挙げられている方」となりますと、決して多くはないのではないでしょうか。

昨今、業績速報値を公開している大手ハウスメーカー各社の業績も軒並み落ち込みを見せておりますが、
その中でも(一昨年の駆け込み期と比較して)昨年の落ち込みが1 割減のハウスメーカーがありました。
D社は以前から紹介受注比率6 割を超える紹介営業構造を持っていたため、
総展に人が来なくなっても、口コミで集客を行い、受注を確保し続けることができたのです。

これは、組織的な活動で持って、先述したような「安定的な紹介実績を挙げる取り組み」を徹底してきた圧倒的な差が如実に結果に表れているとも取れます。

そもそも「紹介活動」は、言い換えますと「自社の口コミをいかに流していただくか」といった
視点で語る事ができます。

また、昨今のお客様の嗜好性を考えますと、「口コミ」はますます非常に重要なウェイトを占めてきているのは今や誰もが疑う事のない事実でしょう。

お客様は、「WEB上にある膨大な情報」より「知人の体験談や口コミなどのリアルな声」を
購入の意思決定の判断材料として重要視しています。

このような背景も踏まえますと、「紹介・口コミ営業体制を実現できるかどうか」は、
「単に安定集客確保」だけではなく、今後の企業戦略上においても非常に需要なウェイトを占めてきていると言えるのです。

「紹介・口コミ営業」に対する誤解!?

実際に「紹介営業に取り組んでいこう」と考えた時に、まず間違えてはいけないポイントが1つあります。

紹介営業の中でも特に最も重要となるのが、お客様からのご紹介ですが、お客様への紹介営業を行う場合、
御社の営業マンは以下のうち、どの段階のお客様に声がけをされますでしょうか。

契約前
契約後~引渡し前
引渡し後

③が多いという場合は要注意です。
紹介比率が50%を越える企業様では、①②で紹介を頂く比率が高いという特徴があります。

お客様の家づくりの過程を考えた際に、お客様の満足度が最も高くなるのは、契約時と引渡し時だからです。

多くの場合で紹介依頼が行われがちな③の段階では、
新築完成時の感動もやや薄れて、満足度は下がってきています。

人が口コミをするのは、感動、満足した時なので、実は③のタイミングでは遅いのです。
ゆえに紹介営業で成功するためには、①②の段階での活動が肝となります。

そして①②の段階で紹介を頂けるようにするには、営業~建築段階において、
お客様が口コミをしたくなるだけの「感動」、もっというと「感涙」を提供出来るかどうかが肝となります。

住宅業界でNo1 クラスのホスピタリティを持つA社では、各式典において様々な仕掛けをしています。

例えば、上棟式で柱に思い出の筆入れをしたり、職人さんと握手をし終了かと思いきや
奥様からサプライズで旦那様に手紙を読んでもらったりといった事です。
「サプライズの手紙」のことは旦那様には内緒で進めていますので、旦那様は当然ですがびっくりされます。
さらにその後、実は奥様にもサプライズプレゼントを用意しておくことで、2度びっくりして頂き、感涙を誘うのです。

クライマックスである引渡し式では、レッドカーペットを引いてエスコートしたり、
スリッパをプレゼントしたり、最後のサプライズでお子様から手紙を読んでもらって、また涙する。 もちろんこれだけでは終わりません。引渡し後に、完成披露パーティをやることもあります。
引っ越しが落ち着いた頃に、施主様のご友人を招いて頂き、会社主催でパーティを開催します。

担当スタッフがお酒を持参し、乾杯の挨拶した後に、お施主様から家を建てたきっかけ、A社に決めたきっかけ、家のこだわりポイントなどの話を質問形式で進めていきます。

そして極めつけは
メモリアルDVD を大きなスクリーンで上映し、建築の始めから、地鎮祭、上棟式、お引き渡しと
感動ムービー仕立てにスタッフが作ります。
暗いところで大音量で流すので、お施主様はもちろん、ご友人の皆様、
しまいにはA社の社員も感動してしまうというわけです。

・・・このようにA 社は、上記のような感動いただく取り組みをしていたため一時期全国でも有名になり、
視察に訪れて真似をされる企業様も多かったと聞きます。

ところが、同じように「感動を呼ぶ仕掛け」を設けても、「実際は紹介につながらなかった」
という苦い経験をされた企業様が大半だったようです。

なぜ、紹介へ結びつかなかったのでしょうか。

実は、こういった感動紹介の体制を作るに当たっては、いくつか落とし穴があります。

その代表的な例は、「お客様の感動を突き詰めていけば、お客様の紹介が増える」ということについての
誤解です。

実は、「感動=紹介発掘数が増える」という単純な式が成り立つわけではないのです。

お施主様に感動いだだくことはもちろん大切なのですが、特に今の住宅購入層においては、
それだけでは「口コミ、他人に紹介する」というところまでは動いて頂けません。

紹介頂くための仕組みは、感動創造とは別で考える必要があるのです。

成果につながる「正しい紹介営業」のステップ

では「成果に繋げるための正しい紹介営業」を行うためには、どのように考えていけば良いのでしょうか。

実は、「お客様を感動満足させる」という事は、紹介の一ステップに過ぎません。

お客様に感動頂くということで、「ベースとなるCIS(顧客感動満足度)を向上させる」という点は
大事になるのですが、感動頂いた後には、次に「紹介依頼」が必要となりますし、
「紹介いただけた方との出会いの場の設定」も合わせて考えておく必要があります。

例えば、「紹介依頼の掛け方」一つをとっても以下のような視点が最低限必要になります。

属性 「どのような属性の方を紹介していただきたいのか」
メリット 「どのようなメリットがあるのか」
場面 「どこに呼んでもらいたいのか・どのように引き合わせて欲しいのか」

上記のうち「属性」は、「具体的に紹介していただきたい方を特定する」という事です。
よくある誤解ですが、上手くいかないパターンとして、
「どなたか家を建てることを検討している方が周りにいらっしゃったら、紹介してくださいね」といった
依頼の掛け方(特定の仕方)です。

これでは失敗に終わります。
「これから家を建てよう」と思っている方の心理を考えると一目瞭然です。

通常、親族や本当に親しい友人を除いて、「これから家を建てようと思っている」ということを周りには話すということは、中々しないものであるからです。

それゆえ、「家を建てる人はいないか?」と聞いても、「いない」という答えが返ってくるのです。

このような失敗をしないためには、
例えば「お子様が生まれて間もない方」「ご結婚されたばかりの方」など対象を明確に指定したり、
場合によっては、
「実は結婚されて賃貸に住まわれていると、トータルでこれだけの家賃が損になるんですよ、
家を建てても賃貸の家賃並みで収まることは珍しくないんですと、そのお友達にお話してみて下さい」などと
「口コミ頂く内容までコントロールしていくこと」が大事なポイントとなります。

また、上記のうち「メリット」では、単に「紹介者への金銭的なメリット」だけではなく、
「自社にとってのメリット(販促費低減の分、お客様お一人お一人にじっくり時間が使える等)」
「紹介いただけた方にとってのメリット(信頼のおける会社・担当が家づくりに関わってもらえる等)」
の三者三様のメリット提示は最低限必要になります。

ここまでやれていれば優秀な営業マンと言えますが、
実は、その中でも本当に紹介で成果を出し続けている営業マンはここからが違います。

お客様は一度紹介依頼を受けても忘れてしまいますし、すぐに活動できることも限られています。
そのような中で、まずは4回、5回と何度も紹介依頼を継続して行えるかどうかがが重要なのです。

組織的に紹介活動で成功している企業様での統計を見てみますと、
1年間に紹介頂いたお客様の数が70人いたとすると、1回目の紹介依頼で動いて頂いた結果の人数は10人のみで、2回目以降、何度も違うネタで紹介依頼をかける中で、残り60人が生まれているという結果が出ています。
すなわち、2回目以降の紹介依頼を数多く実施できるかどうかが重要となるのです。

このように何回も紹介依頼をかけようとすると、
お引き渡しまでの流れの中でどのようにして紹介依頼の仕組みを作るかを考える必要があります。
お施主様がショールームに行く時、見学会を参考に見に来られると時などに
一緒にご友人様を呼んで頂くような仕組みを作ったり、
上棟式の時に親族を呼んで頂いたり、完成時にご友人様向けのプラーベート見学会を開いたりといった
仕掛けを15~20個設定し、全社員で実行することがポイントとなります。

こういった仕組みができてくると、建築客1組に対し、お引き渡しまでに最低1人、多いと2~3人を紹介頂けるようになり、紹介発掘数が格段に上がっていくのです。

組織的な活動へ飛躍させるための4つのステップ

ここまでをやっていこうとしますと、当然ですが営業一個人の動きだけではなかなか上手く行きません。
設計・工務・総務・アフターまで含めて全社員が協力しながら活動できる体制を作ることが大切です。

ただ、この「全社で紹介活動に取り組む際」には、ひとつ大きな問題が出てきます。

「お客様に感動して頂いたり紹介頂ける仕組みを作っていくと、その事自体が業務になってしまい、
探客など各自の本来の活動に時間がとれなくなってしまうという」
・・・という活動の生産性に関する問題です。

例えば、完成披露パーティも、やるとすれば土日なので、それに丸1日時間を使ってしまうと、
新たなお客様との打ち合わせもできなくなってしまいます。

「正しい紹介営業の手法」を理解し、組織的な活動として取り組む企業様も多くいらっしゃいますが、
全てのお客様に向けて取り組もうとするとそのための業務工数が肥大し、
業務が立ち行かなくなる可能性があります。

ですので、むやみに取り組むことはせず、全社の生産性を考慮した上で取り組んでいくことが大事なのです。

以上を踏まえ、組織的な活動へと飛躍させるためには、
以下の手順で取り組むことが大切です。

生産性高く感動頂くための業務フロー設計
紹介・口コミを頂くための業務フロー設計
全社員への紹介営業手法教育
紹介営業に求められる顧客情報の管理体制整備

いかがでしょうか?

これからの「見込み客減時代」に備えて「紹介活動の見直し」を進めていく事は、
今後の経営の舵取りにおいて大きな意味を持っていきます。

新しい年度の始まりを迎えるにあたり、
改めて足元から見直されてみてはいかがでしょうか。

終わりに

・・・さて、今回で「コラム:100棟ビルダーへの道」もシリーズ8作目となり、
一つの区切りを迎える事となりました。

「100棟ビルダー」は、あくまで一つの基準にすぎません。

敢えて言えば、これからの厳しい時代の中で「エリアで100棟」という数字は、
「長く地域から愛される企業としてお客様から支持をされている」という
一つの証にはなるのではないかと思います。

本コラムを愛読いただきました皆様へ、
今後の経営の舵取りにおきまして何らかの価値をお持ち帰りいただけましたなら幸甚です。

末筆ながら、皆様の更なるご発展を心よりお祈り申し上げます。

リブ・コンサルティングについて
会社名 株式会社リブ・コンサルティング(LiB Consulting co.,ltd.)
事業内容 総合経営コンサルティング業務
企業経営に関する教育・研修プログラムの企画・運営
企業理念 “100年後の世界を良くする会社”を増やす
設立 2012年7月 社員数 85名
東京本社 東京都千代田区大手町1-5-1大手町ファーストスクエアウエストタワー20F
大阪オフィス 大阪府大阪市淀川区宮原4丁目1-45 新大阪八千代ビル 10階
韓国支店 CCMM Bldg 12,Yeouido-dong, Young deung po-qu, SEOUL

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