100棟ビルダーへの道

野里泰造(株式会社リブ・コンサルティング)

はじめまして。

この度、100棟ビルダーへの道というテーマで執筆をさせていただきます株式会社リブ・コンサルティング経営企画室の野里です。

このコラムでは、景気の波に左右されずに、安定的に成長を遂げている住宅会社様の特徴を分析し、皆様の経営にお役立ていただく事を目的としてお届けいたします。

100棟ビルダーへの道 Vol.6

人財育成編:育成スピードを高めるためのポイント

はじめに

「人財育成編:育成スピードを高めるためのポイント」
というテーマで執筆をさせていただきますリブ・コンサルティング経営企画室の野里です。

これまで「集客」「営業」「商品開発」と、
経営機能別で全国の優良ビルダーの特徴をご紹介してまいりました。

今回は「人財育成」がテーマです。

「最近の若手はやる気がない・・」といったネガティブな嘆きは、
いつの時代も人財育成を考える上で定番のお悩みではないでしょうか。

実に今から2000年以上前の古代エジプト時代の粘土板の中にも
同様の表現で当時の若者に対し嘆いていた事が知られています。

今回は特に、「最近の若手は "自分で物事を考えない" "考える力がない"」
といった悩みに向き合うべく、「考える力の鍛え方」についてお伝えできればと思います。

「考える力」が企業競争力を支える時代になる!?

ところで、「自分で考える力」はこれからますます重要になる事は間違いありません。

なぜなら、環境変化の激しい業界においては、これまでのセオリーは 一切通用しないからです。
激変する環境の中では、これまでに経験したことのない問題に対して どう打破すべきか、
「自分で考える力」が求められてきます。

例えば、経営戦略という観点で言えば、経営幹部が「考える主体」となっているでしょうし、
営業戦略という観点で言えば、 営業職の管理職クラスが「考える主体」となろうかと思います。

しかし、本来、環境の変化をいち早く肌で感じ、真っ先に対応する絶好のチャンスを握っているのは
言うまでもなく、日々現場の最前線でお客様と接している社員さんです。

自社の社員が、もし「自ら"問題に向き合い打破していくための対策"を考える力」を
持っていれば、これほど心強い事はないでしょう。

いわば、これからは「考える力を持った人財が自社に何人いるのか」という指標が、
企業競争力を図る指標となるといっても過言ではありません。

「指示出しの多発」が人財をダメにしている!?

では、どのように「考える力」を身につけさせるのが良いのでしょうか。

「自分で考えろ!」と感情的になってみても全く意味がないという事は、
ご経験上ご理解いただけるのではないかと思います。

はたまた、「答えを教えるのではなく、考えさせないと!」と頭で分かってはいても、
結局は「何をすべきか」具体的に指示出しをしなければ、
一向に業務が進まないといった事もよくある話です。

そもそも人間は本来、「自分の行動は自分自身で決定したい」という欲求を持っています。

したがって、一方的に強い圧力を掛けられ続けると、
部下は反発心を感じるようになり、その行動をとらなくなるか、
あるいはそれに従ったとしても 「嫌々やらされている」という状態のまま行動することになりがちです。

同じ業務内容であっても、
「指示されたからやっている」と感じながら仕事をしている部下と、
「自分で決めて心の底から納得してやっている」と感じて仕事をしている部下とでは、
仕事に対する意欲に大きな差が生まれる事は容易に想像ができるのではないでしょうか。

また、ある実験によりますと、
「指示されながら学習した場合」と「自分で考えながら学習した場合」とでは、
その後の学習定着率が全く違ってくるという結果があります。

一方的に指示された場合では、「3週間後の定着率」は70%、「3ヵ月後の定着率」は10%に落ち込みます。
一方、自分で考えながら学習した場合、「3週間後の定着率」は85%、
「3ヶ月後の定着率」は65%と3ヵ月後比較にて、実に6.5倍の違いが生じるそうです。

つまり、「指示出し」だけでは具体的に業務内容を覚えさせるにしても効果は薄く、
無論、「考える力」も身に付かないのです。

「質問」こそが「考える力」を鍛える処方箋

ここで、あなた自身をイメージして以下2つの問いかけについて考えてみてください。

問(1)
部下に一方的な指示をするだけではなく、
積極的に考えられるよう「質問」を投げ掛けている。
問(2)
部下に質問をする際、「なぜできない?」と問い詰めるのではなく、
「どうしたらできる?」という「前向きな表現」を使っている。

いかがでしょうか?
「2つともYES」と自信を持って答えられる方は、以下読み進める必要はないでしょう。

おそらく、あなたは既に部下が十分に意欲を持って「自分で考える力」を身につけている事を
肌で実感できているはずだからです。

実は、「考える力」を鍛える最良の方法は、普段のコミュニケーションにおける「質問の仕方」にあります。

「質問の仕方」一つ変えるだけで、部下が
「主体的に自ら考える意欲を持って、力を見に付けていく」という事を実現できるのです。

以下、代表的な「質問の仕方」についてポイントをご紹介します。

拡大質問

部下に考えさせたい時は可能な限り「限定質問」を少なくし、
「拡大質問」を多く使うように心がけると良いでしょう。

限定質問とは「YESかNO、あるいはAかBで答えられる質問」で、考える余地が限定的になる質問です。

一方、拡大質問とは「フリーアンサーで答えられる質問」で、考える余地を持たせた質問です。

拡大質問を上手くコミュニケーションに組み込む事で
「自分で考えるトレーニングを積ませる事」が可能となるのです。

肯定質問

「肯定質問」とは、物事の肯定的な側面に焦点を当てる質問で、
質問の中に「できる」という肯定形の言葉を含みます。

例えば、「どうすれば時間通りに終わらせる事ができると思う?」といった質問の仕方です。

一方、「否定質問」は、物事の否定的な側面に焦点を当てる質問であり、
質問の中に「ない」という否定形の言葉を含みます。

例えば、「なぜ時間通りに終わらないのか?」といった質問の仕方です。

肯定質問をされると、部下は前向きな気持ちになります。
すると、自発的に考えるようになり、新しいアイディアが生まれやすくなります。

反対に、否定質問をされると、部下は後ろ向きになります。
自身の不十分な点について責め立てられているような感覚を受け、言い訳が多くなってしまいます。

まずは、「"質問の仕方"一つで意識は変えられる」という事をご理解いただきたいと思います。

「質問力」×「共通言語」で育成スピ-ドを高める!

「質問」を通して「考える力」を鍛えていく一方で、
「何について考えさせていくか」という点も人財育成のスピードを高めていく上で重要になります。

北関東を中心にミドルコストで年間500棟超の販売実績を上げているトップビルダーA社では、
総勢50名の営業担当者のうち、実に約半数が新卒3年目以下で構成されていますが、
安定的に年間10棟/人ペースの生産性で過去7年間に渡り右肩上がりの成長を 遂げていらっしゃいます。

A社では、早期人財育成のために「何について考えさせていくか」を社内固有の言語として
取りまとめた上で指導を行っています。

この「社内固有の言語」の事を、「共通言語」と呼びます。

「共通言語」とは、「その言葉(表現)を聞けば、誰でも全く同じ意味で理解できる言葉(表現)」を
指します。

例えば、以下のケースで人財育成における「共通言語の意味」を考えてみます。

ある上司と部下のやりとり場面を見る

さて、上記のケースにおける上司は、積極的に部下を育てようという意欲はあるのですが、
いまいち要領を得ていません。
「コミュニケーションという言葉の意味」が上司と部下で異なるために、すれ違いが起きているのです。

上司は「好感を持ってもらう事と、信頼を勝ち得るコミュニケーションの取り方は違う」という事を意図しているのに対して、部下は「単に、もっと心を開いてもらう事だ」という認識で動いています。これは、本ケースの場合「”コミュニケーション”という言葉は共通言語になっていない」という事を示しています。

例えば、ここで「好感を得るコミュニケーション」と「信頼を得るコミュニケーション」を区別する言葉が
共通言語として存在していれば、このようなすれ違いは起きないという事は想像に難くないのではないでしょうか。

過去連載してまいりましたコラム「営業編」をご覧いただている読者の方であれば
お察しの通りかと思いますが、「営業編」で紹介しました「購買心理」の考え方は、人財育成における「共通言語」としても活用できるのです。

前述したトップビルダーA社は、上記のケースのような"すれ違い"が起きないように「人財育成のための共通言語」を 数多く設けています。
「質問によって考えさせる習慣」と「人財育成における共通言語の設定」の両輪が急成長を支える土台となっているのです。 いかがでしたでしょうか?

この機会に、「自分の力で考える力を持った人財を何人創れるか」
という点にこだわってみるのも、これからの時代、十分に価値があるでしょう。

まずは、日頃のコミュニケーションのあり方から見つめなおす事を検討されてみてください。

リブ・コンサルティングについて
会社名 株式会社リブ・コンサルティング(LiB Consulting co.,ltd.)
事業内容 総合経営コンサルティング業務
企業経営に関する教育・研修プログラムの企画・運営
企業理念 “100年後の世界を良くする会社”を増やす
設立 2012年7月 社員数 85名
東京本社 東京都千代田区大手町1-5-1大手町ファーストスクエアウエストタワー20F
大阪オフィス 大阪府大阪市淀川区宮原4丁目1-45 新大阪八千代ビル 10階
韓国支店 CCMM Bldg 12,Yeouido-dong, Young deung po-qu, SEOUL

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