100棟ビルダーへの道

野里泰造(株式会社リブ・コンサルティング)

はじめまして。

この度、100棟ビルダーへの道というテーマで執筆をさせていただきます株式会社リブ・コンサルティング経営企画室の野里です。

このコラムでは、景気の波に左右されずに、安定的に成長を遂げている住宅会社様の特徴を分析し、皆様の経営にお役立ていただく事を目的としてお届けいたします。

100棟ビルダーへの道 Vol.3

営業編②:クロージング(契約)までの契約確率&スピードを高めるためのポイント

はじめに

11月の営業編①の続編としまして今回は「営業編②:クロージング(契約)までの契約確率&スピードを高めるためのポイント」 というテーマで執筆をさせていただきます
株式会社リブ・コンサルティング経営企画室の野里です。

前回は、
「住宅購入を検討している一般消費者による接客調査(ミステリー・ショッピング・リサーチ※注)」のコメントを通して、「お客様目線」「営業現場目線」で
「どのような販売方法がお客様の心に響くのか」
「売れている販売現場においてどのようなアプローチがされているのか」、
「どのようなセールスがお客様を契約へと導いているのか」について
お客様から見た実態を生々しくご紹介してまいりました。

      (注)
      ミステリー・ショッピング・リサーチ(MSR)とは、(株)MS&C社が提供する
      日本全国で40万人の会員(2014年11月時点)を持つ、営業現場の覆面調査サービスです。
      会員は30代女性を中心とした一般消費者で構成されており、「顧客の声」を知るためのツールとして
      業界でも数多くの導入実績があります。

下図は前回ご紹介したお客様の心理「購買心理のステップ」です。
「お客様の買いたい気持ちをどういう順番で高めていくのか・どう心理が変化していくのか」を表しています。
下図のように、お客様を買いたい気持ちへ誘導していくセールスの事を
「ナビゲーションセールス」と呼び、売れているセールスは「ナビゲーションセールス」を身につけています。

さて、今回はナビゲーションセールス実現に向けて
購買心理ステップの中でも特に難易度が高く、
かつ「契約確率とスピード」に大きな影響力を持つステップに焦点を当てて
お客様心理を紐解いてまいります。

「心頼形成の壁」を乗り越える ~好印象は持たれるが、"いい人"で終わるケース~

先述したミステリーショッピングリサーチのレポート内容を見てみますと、
購買心理の6つのステップの中で、まず初めにハードルとなるのが
2つめのステップ「心頼形成の壁」です。

1つめのステップ「好感形成」は社会人としての一定のキャリアがあれば、
8割以上の営業担当がクリアしているのですが、
実に、「心頼形成」となると、クリアできている営業担当が3割以下といったところまで落ち込みます。

「好感形成」とは、「この担当者であれば会話をしても良いと思っていただけている心理状態」の事を
指します。
つまり、「この人、感じ(雰囲気)が良いな」と思ってもらっている状態です。

ですから、「身なり・服装・マナー」など「第一印象が大きく左右する領域」が、
この「好感形成」では重要となります。

一方、「心頼形成」とは、「この担当者は心から信頼がおけると思っていただけている心理状態」を
指します。
つまり、「この人は専門家・プロフェッショナルだから相談してみようかな」と思ってもらっている状態です。

実に今、この「心頼形成」をクリアできない営業担当が激増しています。

ちなみに、このステップをクリアできないままで商談を進める(こちらが話したい事、やるべき事を進める)と
以下のような問題が起きます。

上記3点のケースが多発しているという場合は要注意です。
このような状態に陥ってしまうと、「せっかく集客(接客)できたのに、時間だけ掛かって徒労に終わる」
といった事にもなりかねません。

では、一体なぜこのような事が起こるのでしょうか。

端的に申し上げると、「そもそも信頼できない人間に任せるような事はしない・相手にしない」
といった事が背景となるのですが、もう少し掘り下げてみます。

そもそも我々住宅業界に携わる営業担当は、当然ですが医者や弁護士のような士業と違い、
社会的に一定の信用がある、いわゆる"先生"と呼ばれるような職業ではありません。
例えば医者であれば、我々が病院に行き診断を受ける際に症状(問題点・希望)についてヒアリングされても
素直に答える事かと思います。
なぜなら、最初から一定の信頼があるからです。
さらに診断に素直に答える事で、どのような処方がベストな解決策となるのかといった説明について
納得して受け入れる事ができます。

一方我々は最初から一定の信頼があるわけではありません。
したがって、まずは信頼を積み上げるステップが必要となります。

このステップを飛ばした場合、先ほどの医者の例に置き換えてみますと、
「医者かどうか分からない人間が出てきて、いきなり自分の話(=会社の特徴・プランの特徴などの説明)や、
問診のような予算やプラン要望のヒアリングをしているような状況」が起きてしまうわけです。
これでは、こちらがヒアリングしたい予算や要望について伺っても、まともに本音を話すわけがありませんし、
次回以降、話を続けたいとは思っていただけないでしょう。

こういった心理が上記3点の問題事象の背景である事をまずは理解しなければなりません。

心頼形成ステップクリアに向けた3つのアプローチ

では、「心から信頼を得る=心頼形成をクリアする」ためには、どのようなアプローチが必要となるのでしょうか。
ポイントは下図の3つです。

心から信頼を得る=心頼形成をクリアするためのポイント

ポイント1「入口女性・出口男性」ですが、
購入の意思決定の流れを見ると、「まずは初回の早い段階で、女性(奥様)の信頼を獲得する」という
事が何よりも重要になります。
「商談のプロセスで都度、次の段階へ進む上で、誰の意見が強く反映されるか」といった調査を
見てみますと、プランニングが固まり資金計画~クロージングといった段階においては
圧倒的に男性(ご主人様)主導になるのですが、
実は、「初回の商談から次の商談へステップアップする段階」では、7割近い割合で「女性(奥様)の意見が尊重される」という見解もあります。

つまり、最初の商談時に「女性(奥様)を中心に心頼形成をクリア」できなければ、
先へは進めない確率が圧倒的に高まるという事を示しています。

ポイント1に関連して、ポイント2「3大関心テーマを外さない」とは、
表現を補うと、「女性(奥様)が住関連に関して関心を持っているテーマを外さずに話ができるかどうか」
という意味になります。

繰り返しになりますが、我々は「最初から信頼を置かれている」わけではありません。
「我々は確かにプロとして信頼に値します」という事をアピールする必要があるのです。

ゼロベースで「どういう人物が信頼できるか」、想像してみてください。

例えば医者であれば、「症状の解決策について豊富な知識を持っていて分かりやすく説明してくれる人」でしょう。では、我々はどうあるべきでしょうか?
「女性(奥様)が住関連に関して知りたい、聞きたいと思っている知識を豊富に持っていて、分かりやすく説明してくれる人」となります。

実は、心頼形成がクリアできていない担当の場合、「そもそも女性(奥様)が知りたい、聞きたいと思っている関心テーマ」を外しているケースが多く見られます。

関心事調査をすると、いつの時代もベスト3に入るテーマについて、
皆様は自信を持って答えられるでしょうか?
下図の3つのテーマは3大関心テーマとして多くの女性(奥様)が関心を持たれているテーマです。

女性(奥様)が関心を持つテーマ

常に心頼形成をクリアしている営業担当の中には、この3つのテーマについて60分以上語る事ができる
といった方もいらっしゃいます。

最後にポイント3「情報格差を取る」という点ですが、
これは上記の「分かりやすく説明してくれる」というところと関連します。

例えば、「収納」というテーマで話をして信頼いただこうと考えます。
ですが、その際に、「収納を玄関に設けると、靴が収納できて便利です」といった程度の説明では、
関心のあるテーマだったとしても「情報格差」は取得できません。
この場合であれば、例えば最低でも以下の水準で説明ができなければなりません。
「生活した際のイメージがありありと浮かんでくる」といった点が特徴です。

生活がイメージできる提案例

また、土地からお探しのお客様であれば、「立地(ロケーション)」×「子育て」というテーマで
単に、「白地図を見せて、ご希望の土地から徒歩15分の場所に●●小学校があります」といった説明では、
先述と同様に「情報格差」は取得できません。
例え、同じく地図を見せながらの説明であったとしても、せめて
「お子様が小学生ですと学校帰りの通学路が暗いとご不安ですよね?例えば●●小学校までの通学路ですと
ココとココに街灯が立ってますので、この順路で帰宅いただけるようにすると、ご安心いただけるかと思います」
といった水準の説明ができなければ、「分かりやすい説明」にはなりません。

「心頼形成ステップクリアのための3つのアプローチ」、いかがでしたでしょうか?

契約確率・スピードを高めるためには、まずは「心頼形成のあり方」を見直す必要があります。

次回は、「自社・商品の差別化における見せ方・伝え方」というテーマに関連して、
「競合との勝率を高める」といった点に焦点を当ててお伝えができればと思います。

リブ・コンサルティングについて
会社名 株式会社リブ・コンサルティング(LiB Consulting co.,ltd.)
事業内容 総合経営コンサルティング業務
企業経営に関する教育・研修プログラムの企画・運営
企業理念 “100年後の世界を良くする会社”を増やす
設立 2012年7月 社員数 85名
東京本社 東京都千代田区大手町1-5-1大手町ファーストスクエアウエストタワー20F
大阪オフィス 大阪府大阪市淀川区宮原4丁目1-45 新大阪八千代ビル 10階
韓国支店 CCMM Bldg 12,Yeouido-dong, Young deung po-qu, SEOUL

ページ上部へ戻る